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  • 執筆者の写真Yuto Shimoyama

ポリ酸を基盤とする多孔性イオン結晶の触媒応用と特性の解析

更新日:2022年1月22日


"Structure-function Relationships of Porous Ionic Crystals (PICs) Based on Polyoxometalate Anions and Oxo-centered Trinuclear Metal Carboxylates as Counter Cations (ポリオキソメタレートアニオンとオキソ中心三核金属カルボン酸塩をカウンターカチオンとする多孔性イオン結晶(Porous Ionic Crystals, PICs)の構造-機能の相関)"

Yuto Shimoyama and Sayaka Uchida, Chem. Lett. 2021, 50, 21–30. (doi:10.1246/cl.200603) Cover Picture


 私は学部2-3年次はデンドリマー状の構造(分子の枝分かれによって生じた球体状構造)を持つ多孔性高分子(Porous Organic Polymer, POP)、卒業研究では窒素がドーピングされた炭素材料を用いた酸素還元触媒のメカニズム研究、修士ではパラジウムと銀の協同的な作用による有機合成触媒反応のメカニズム研究と取り組んできました。(それぞれ、筑波大神原研究室⇒中村・近藤研究室(現中村・武安研 ,近藤研 )⇒神原研究室)

 博士課程では、東大総合文化研究科内田研究室に移籍し、ポリ酸(Polyoxometalate, POM)という負の電荷を持つ金属の酸化物クラスターを用いたスポンジ状の多孔性イオン結晶の研究を行っています。多孔性イオン結晶(Porous Ionic Crystals, PICs)は、ゼオライトやMOF/PCPと同様に吸着・分離、多孔性の触媒など様々な機能を持ちます。私はその中でも触媒特性に注目して研究を行っています。私が触媒特性の研究に焦点を当てたのは以下の3つの理由があります。

①私のバックグラウンドにある触媒研究(特にメカニズム面の研究)を活用できる

⇒明確に定義された構造を持つPICsはメカニズム研究に適しており、私の得意を活かせるフィールドです。

②PICsの触媒特性、特に酸化還元触媒特性は分かっていないことが多い

⇒ポリ酸自体の触媒特性は良く知られていますがPICsの触媒応用例はわずかです。特に酸化還元触媒としての報告例は殆どありません。(内田研ではゼロ)完全なブルーオーシャン状態です。

③触媒機能の解析を通してPICsの特性やポテンシャルを明らかにできる

⇒触媒反応は物質の吸着、活性化、プロトンや電子の移動といった複数の過程を伴います。解析は難しいですが、解析から得られる情報量も非常に多く、広範な知見が得られます。


”せっかく、色々な分野を経験してきたので内田研の強み(PICs, 物理化学的な解析)と私の強み(錯体、均一系触媒、固体の電極触媒、メカニズム研究)を合わせて、今まで内田研究室では取り組まれていなかった新たな研究テーマ/分野に挑戦していこう”

というのが私の博士課程を通しての研究方針です。

※各テーマにジャンプできます※

⇒論文発表済

テーマ3:構成ユニットが誘起するPICsの相乗的な電気化学還元触媒能

⇒in progress

テーマ4:電子状態チューニングで強化されたPICsの"Bifunctional"な電気化学触媒能

⇒in progress



 

研究テーマ1

メソ多孔性イオン結晶の構成ユニット-酸触媒特性の相関


”Isostructural Mesoporous Ionic Crystals as a Tunable Platform for Acid Catalysis“, Y. Shimoyama, Z. Weng, N. Ogiwara, T. Kitao, Y. Kikukawa, S. Uchida*, Dalton Trans., 49, 10328–10333 (2020). DOI: 10.1039/D0DT01202E 裏表紙に採択


 2 × 3 nmほどの大きな空間を持つメソ多孔性イオン結晶は穏やかな酸触媒として機能することが先行研究で明らかとなっていました。(T. Yamada et al., ChemCatChem, 11, 3745-3749 (2019). DOI: 10.1002/cctc.201900614, R. Kawahara et al., Dalton Trans., 45, 2805-2809 (2016). DOI: 10.1039/C5DT04556H ) しかし、その酸触媒特性が何に由来するのかは分かっていませんでした。

 そこでわたしは、異なる構成ユニット(ポリ酸、対カチオンとなる金属イオン)から同一の結晶構造を持つPICsを合成し、酸触媒特性を評価すれば酸触媒特性の由来が明らかにできると考えました。PICsの構造がマクロカチオン(クロム3核錯体)の種類とPOMの形状、価数によって決定されるという点、元々3価のクロムイオンが対カチオンである点に着目し、POM、対カチオンの変更を行い同一構造かつ異なる構成ユニット(ポリ酸、対カチオン)を持つPICsの合成に成功しました。これらのPICsを用いて、酸触媒反応を行うと触媒活性が

①内部に存在する水和された対カチオンのpKa(酸性度の強さ)

②ポリ酸の種類(表面の塩基性度≈電荷密度)

の両方に依存していることが分かりました。従ってPICsの酸触媒特性はこれら2つを系統的に変更することでチューニング可能であるといえます。これは今後の触媒設計の重要な指針の1つとなる知見です。また、PICs内のカチオンの効果を明らかにした初めての研究でもあり、今まで電荷のバランスを取るためだけに存在していると思われていた対カチオンが役割を持っていることを明らかにできた点も本研究の成果です。


 

研究テーマ2

電荷移動を駆動力とするCo含有POMを基盤とするPICsの酸素生成触媒能



公聴会で使用したスライドの一部を公開しました。(未発表部などは削除済み)


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